発散と収束。

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映画『最後の決闘裁判』を観て

(ネタバレ注意です。Filmarksの感想から書き足しました)

 

あらすじを書く気力がないので、映画.comさんをご覧下さい。と言いつつジャンプさせるの申し訳ない気がしたので、解説(あらすじ)を以下引用します。

https://www.google.co.jp/amp/s/eiga.com/amp/movie/95460/

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1386年、百年戦争さなかの中世フランスを舞台に、実際に執り行われたフランス史上最後の「決闘裁判」を基にした物語を描く。騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに乱暴されたと訴えるが、目撃者もおらず、ル・グリは無実を主張。真実の行方は、カルージュとル・グリによる生死を懸けた「決闘裁判」に委ねられる。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は罪人として死罪になる。そして、もし夫が負ければ、マルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けることになる。人々はカルージュとル・グリ、どちらが裁かれるべきかをめぐり真っ二つに分かれる。

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以下は私の感想です。

心に響いた映画。全体的に暗いが見てよかった。14世紀のフランスが舞台の映画だけど、現代にも通ずるものがある。

 

まずは、夫婦の信頼関係っていうのは大事だなと思った。状況証拠がなくても、妻の発言を夫が信じてくれたことには救われた。(最後のテロップでマルグリッドがカルージュとの死別後再婚することもなく、幸せに生きたと知って安堵した)

 

そもそもマルグリッドが勇気を持ってすぐに夫に告白出来たことがすごく良かった。それに比べて、ルグリの卑劣な口止めの仕方よ。「夫に言ったらお前を殺すだろう(だから止めろ)」「お互い情欲に溺れた(合意の上の行為)」とか言って犯行後すぐに被害者に圧をかけて隠蔽しようとする。ルグリは良い所もある人だったけど、調子に乗りやすい所もあってそこが仇となったのだなぁ。

 

あととても気安いことを言うと、無骨なカルージュと穏やかで優秀なマルグリッドの組み合わせは、何だかんだで互いに信頼と愛があるような所が萌える。

 

さて一応真実を言った者が勝ったという意味でハッピーエンドではあるのだが、考えさせられる要素が沢山ある。マルグリッドはルグリに罪を認めさせたかっただけで、死闘裁判に持ち込みたかった訳ではないのに片方が死ぬ結果になってしまった。レイプ犯には罪を償って欲しいと思うが、死罪にまで値する罪かは疑問だと私は正直思う(ルグリは両思いだときもい思い込みしてるし)。マルグリッドの終始複雑な顔も印象的だ。

 

カルージュは「神の審判」というような言い方をしたが、武力によって決着をつけるというのは、理性的ではない。結果的に勝てたので良くはあったのだが…

 

またこの時代聖職者による強姦についての告発は多く、聖職者にとっては聖職裁判をすれば罪を免れるという抜け道があったということにも心底がっかり。若干話が逸れるが、最近でもカトリック教会で児童虐待に3000人の聖職者が関与しているなどと報道されていて、そういうことに通ずるのかなと思った。性欲を禁ずると無理が生じるのだなと思った。

 

とは言え、性欲を許せばピエール伯爵のような肉欲に溺れた権力者が生まれる。中世はああいうことが横行していたんだろうか。時代も国も違うが、性欲に溺れる指導者という意味で『女王陛下のお気に入り』(18世紀イングランドが舞台)という映画を思い出した。『最後の決闘裁判』は14世紀フランスが舞台なので全く異なるのだが、一括りにして申し訳ないが、なんだか陰鬱で性に溺れる感じが共通しているように思えた。

 

また、死闘(duel)後の群衆の湧き方も異様だ。死闘前にはマルグリッドの供述を信じなかったり、レイプ告発を非難した人々が、死闘後は掌を返したような反応をしたり。群衆の反応というのは信用しがたいものだと思ったし、自分が群衆側にいる時には、なるべくゴシップに踊らされず、物事を自分で判断したいと思った(しかしとても難しい、どうやればいいのか)。

 

また、観賞後に調べていて驚きの発見もいくつかあった。以下、映画.comから引用。
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グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」以来のタッグとなるマット・デイモンベン・アフレックによる脚本を映画化した歴史ミステリー。
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ベンアフが脚本しながら、あのクソみたいな伯爵役(しかも見慣れない金髪だからベンアフだと特定しづらい)をやってることに驚いた。流石役者すぎる。

 

そういえば『グッドウィル・ハンティング』でも、マット・デイモンが主役で、ベン・アフレックは脇役だったので(でもピエールとは違ってめっちゃ良い奴だが)、この2人は自分たちの中でそんな配役がしっくりくるのですかね。

 

また、カルージュ、ルグリ、マルグリッド(最後がマルグリッドというのが味噌)の三者の視点から写しているのもすごく良い。リドリー・スコット監督がよくやる手法なのだろうか。

 

決闘のシーンが手に汗握る展開。どちらが勝つか最後まで分からず。シャルル王の血に塗れた決闘に狂喜する感じも印象的。シャルルの妻もピエールの妻もマルグリッドも、女性は結構不安そうな表情で見ていたのが記憶に残っている。

 

そして、アダムドライバーの役者としての幅が広すぎてすごい。アダムドライバーを初めて見たのってSWだったと思うが、その後マリッジストーリーみたいなヒューマンドラマ系だったり、本作みたいな歴史かつ激しいアクション系だったり、幅を広げてきていてすごいなと思う。SWではライトセーバー振り回すくらいだったと思うが、本作ではかなりの肉弾戦を演じていた。お見事でした。

 

ここまで書き殴ったが、色んな感情が湧き上がるとても良い作品でした(後から後から言語化出来ていなかった思いがじわじわ出てくる)。暗いけどおすすめです。暗いけど、男女の異なる視点を理解するとかそういう意味で、夫婦やカップルで見るのも良いかなと思いました。